インフレ下で株価は上がるのか — トルコと日本に共通する『名目高・実質安』
物価が上がれば通貨価値は下がる。一方で株価は名目で上昇する。トルコリラと BIST 100 の極端な事例から、円安・物価高局面の日本株を考える。
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概要
「物価が上がる」と「通貨の価値が下がる」。これは経済学の基礎ですが、その同じ国で 株価は上がる という現象がしばしば起きます。トルコのリラと株式市場は、その極端な事例として象徴的です。同じ構造は、円安と日本株高が同時進行する局面の日本にも当てはまります。
ポイントは、株価は名目(その国の通貨建て)で測られること。通貨が弱くなれば、同じ価値のものでも数字としては大きく見えます。実質購買力で見直すと、株高の意味はかなり変わってきます。
通貨が弱くなると、なぜ株は名目で上がるのか
- 企業の売上・利益が名目で膨張する
- 物価上昇に合わせて販売価格が上がるため、売上・利益の数字は増える。
- 輸出企業は為替差益で利益が押し上がる
- 自国通貨安は輸出企業に有利。海外売上の自国通貨建て換算が膨らむ。
- 株式は実物資産に裏付けられている
- 通貨価値の希薄化(インフレ)が進む局面では、現金よりも実物(株、不動産、金)を保有する動きが強まる。
- 代替投資先の不足
- 高インフレ国では銀行預金が実質マイナス。株式・不動産・外貨が資産防衛の主な手段になる。
トルコの事例:リラ暴落と BIST 100 の上昇
トルコは2010年代後半から2020年代にかけて、
- リラ安の急進行(対円・対ドル)
- 30〜80% 台の高インフレ
- 政策金利を引き下げ続ける非正統派の金融政策
を経験しました。その結果、
- リラは円より価値を失った(10年単位で大幅減価)
- BIST 100(トルコ株式指数)は名目で5倍以上に上昇
という現象が観測されました。一見すると「株価5倍」は強気のニュースですが、
- リラ建てで見れば5倍
- ドル建て/円建てで見れば、為替減価で実質ほぼ横ばい〜マイナスになりうる
という二重構造です。これは「インフレ+通貨安+株高」が実質的にゼロサムに近いことを示しています。
日本株への含意
近年の日本も、
- 食品・エネルギーを中心にコストプッシュ・インフレ(日本の食料インフレと輸入依存)
- 円安基調(USD/JPY 上振れ)
- 日経平均は名目で過去最高圏
という条件が揃っています。これはトルコの構図と地続きであり、
- 日本円のグローバル購買力は低下
- 円建ての日本株はその分だけ押し上げられる
- ドル建て日経平均で見ると、円安局面の上昇は割り引かれる
という関係になります。「日本株が上がっている」のは、企業の実力向上だけでなく、通貨減価のミラーイメージでもある部分があります。
投資家としての視点
- 名目リターンと実質リターンを分ける:名目の上昇率からインフレ率を引いた「実質リターン」が、購買力の伸び。
- 建値通貨を意識する:日本株を円建てで見るか、ドル建て換算で見るかでパフォーマンスは大きく変わる。
- インフレヘッジとしての株式:通貨安・インフレ局面では現金よりも株式の方が相対的に防御力がある。ただし、選別された企業(価格転嫁力のある企業)に限る。
- トルコの教訓:政策の信頼性が失われた国では、株価名目上昇は実質ゼロサムになりがち。マクロ政策の質も評価対象。
まとめ
- 通貨価値の下落と株価の名目上昇は、しばしば同時に起きる。むしろ通貨安が株高の一因になる。
- トルコリラと BIST 100 の関係は、その極端な事例。「株5倍」も為替で割り引くと景色が変わる。
- 日本も「円安+日本株高」を共有しており、通貨建てを意識した実質リターンで評価する必要がある。